突然の豪雨に見舞われ、必死で走って帰る灯杜。
家に帰ったはいいが、頭の先から靴の中までびしょ濡れである。
…だが、かろうじて濡れなかったものもある。
スーツの内側に抱えていた、誕生日プレゼントの数々だ。
持って帰ることの出来る大きさのものだけを袋に入れて抱えてきたのだが、
それでも雨に濡れないように走るのはなかなか大変な事だった。
ひとまずシャワーを浴びた後、灯杜は缶ビールを開けた。
ソファーに座り、鼻歌交じりにテーブルの上に置いたプレゼントの包装を
一つずつ丁寧に剥がしていく。
プリンの詰め合わせやブランドもののタオル、
小さなグラスアート、おもちゃのメトロノーム。
それぞれ趣向を凝らしたプレゼントがテーブルの上に並べられていく。
灯杜は子供の様に瞳を輝かせながらそれらを眺め、
プレゼントを一つ開ける度にビールを口にした。
彼が特に気に入ったのは、ピアノの形をしたオルゴールだ。
金色のネジを巻くと、ピン、とした可愛らしい音が
聞き慣れたメロディを奏で出す。
「……お、『歌うたいのバラッド』!」
流れているのは、彼自身もよく弾き語りをしている曲のサビの部分。
灯杜はすっかりいい気分になり、
メロディに合わせて歌詞を口ずさみながら2本目の缶ビールを開けた。
(いいなあ、嬉しいなあ。俺この曲ほんと好きだ。…でも、一体誰がこれを?)
もう一度ネジを巻きながら記憶を探ってみるが、
どうも該当しそうな人物がいない。
はて、と首を傾げてみるが、結果は同じことだった。
「─────────…まあ、いいや。感謝です!」
カンパーイ、と2本目の缶ビールを掲げて一人音頭を取り、
そのままグビグビと飲む。
今日はいつもよりもメールや電話が多かったし、
色々な人から声をかけてもらった。こうしてプレゼントも貰えた。
とにかくいつもより騒がしい一日だったな、と灯杜は一日を振り返る。
「…おめでとう、俺」
缶ビールを片手にぽつり、と呟いて、彼はいつもより静かな夜を過ごした。
──────────────
紛れ込ませておきました(笑)
『歌うたいのバラッド』は言わずと知れた斉藤和義さんの曲。
雪間さんから戴いた灯杜のテーマです.+’
自分の時間をしっかり持ってる灯杜兄さんが好きですハピバ!